ノーベル物理学賞受賞者の父とフルート奏者の母を持つネッド・スタインバーガーは、芸術大学で彫刻科を専攻した後に家具職人としてキャリアをスタートさせる。

1976年、ニューヨークでSpector Guitarを営んでいたスチュアート・スペクターと出会い、自らベースのデザインを提案。それまでの専門外である弦楽器を設計するにあたり、「どのように楽器を持つのか、立って弾く場合、もしくは、座った場合はどうか、もっと弾きやすく、もっと快適にするにはどうすれば良いのか」を考え、「重たいエレキ・ベースが肩や体に負担をかけない為のデザイン」を課題とし、新しいソリッド・エレクトリックベースが誕生する。

椅子の背もたれに着想を得た人間工学に基づくカーブド・ボディにスルーネック構造を備えたベースは、Ned Steinbergerの頭文字をとったNSシリーズとして1977年に発売。コンパクトで体にフィットするNSベースは、Spectorのオリジナリティ確立のみならず、スタインバーガーにとっても楽器デザイナーとして最初の大きな成功となりました。

NSをデザインした後、彼はすぐに「ヘッドレス」のコンセプトを思いつき、1980年にスタインバーガー・サウンド・コーポレーションを設立。従来の楽器の形に束縛されないデザイン、グラファイトとカーボンを独自比率でミックスさせた合成素材を使用したヘッドレスベース「L2」を発表。米国産業デザイナー協会から優秀なデザインの製品として表彰を受ける。

1982年、エレクトリックギター「GL」の製作を開始。 和音の各音程間の関係性を保ったままアーミングができるトレモロ・ユニット“Transtrem System”の開発、両端にボールエンドがついた専用弦の採用など、エレクトリックギター史に革新をもたらしました。

1986年、スタインバーガーは 自身による独自デザインの楽器開発に専念するためにブランドを売却し、NS DESIGNを創立。1930年代に作られてきたクラシック弦楽器をエレクトリックで再構築することコンセプトに、ビオラ・チェロ・バイオリンなどのユニークなアップライト製品の開発を手掛けています。

現在 スタインバーガーの精神はギブソン傘下の Spirit by STEINBERGERに引き継がれ、木製ボディ＆ネックの製品を製造。マテリアルこそ当時と異なりますが、ヘッドレスデザイン、革新的なトレモロ、ダブル・ボール弦などの特徴な仕様をしっかりと継承しています。